相続は、財産というバトンを渡すリレーです。

「相続放棄」と「財産放棄」は同じではない!?

前回、あなたは何歳まで生きたいですか?という問いを立てました。
生きることは誰にでも共通していますが、それと同じように死というものも誰にでも訪れます。
人が死ぬことを亡くなると言いますが、無くなるのではなく発生するものもあります。
それは何でしょうか?そうです、相続です。人が死ぬと相続というものが発生します。
もし、あなたが相続人だとしたら、相続する財産は何をイメージしますか?
現金、預貯金、不動産、株式等の有価証券、投資信託商品などなど、いわゆるプラスの財産をイメージすると思います。
しかし、相続する財産はそれだけではありません。マイナスの財産、いわゆる借金や未払いの税金等の支払うべき財産もあるのです。
マイナスの財産がプラスの財産を上回るようなケースもあります。
そのような場合に利用するのが「相続放棄」という制度です。
「相続放棄 」は《 家庭裁判所に申し立てをして初めから相続人でなかったことにする》制度です。
よく誤解されるのですが、話し合いの中で自分は財産が要らないと意思表示することによる「財産放棄」とは異なります。
「財産放棄」しても相続人であることに違いなければ 、場合によっては借金を請求されて支払わなければならなくなることもあるのです。

認識と法律との間にあるズレ

「相続放棄」と「財産放棄」が違うと聞いて驚く人も多いかもしれません。
そうなんです、多くの人の認識と実際の法律の仕組みとの間にはズレがあります。
相続の現場では次のような場面によく出会います。
「書類は残っていないが、父は生前私に財産を渡したいと言っていた。家族全員が知っている。」
「印鑑は押していないけれど、私に財産を渡すと母が一筆を残している。」「パソコンで入力した遺書がある。」
確かに、相続の場面では遺言があるかないかによって財産の動き方が大きく変わります。
遺言があれば、原則的に遺言の内容に従って財産が相続され、遺言がなければ、法律によって定まった割合で相続するか、相続人全員による協議によって財産を引き継いでいくことになります。協議が整わない場合は、裁判所で解決することになります。
しかし、遺言は、法律で決まった様式を満たすものでなければ、「単なる気持ちを記した紙切れ」に過ぎません。
どんなに具体的な内容が書かれていたとしても、遺言としては認められません。
これが、認識と法律のズレというものです。
このズレを埋めるために、自筆証書遺言や公正証書遺言といった仕組みを正しく知る必要があります。
もっと言えば、残す財産の種類や額を予め決めたい場合は、法律で認められる遺言を作ることが必要、というわけです。

正しく知って対処しておけばトラブルは防げます

もう少し話を進めましょう。先ほど、遺言がなければ、法律で定まった割合で相続するか、相続人全員で協議して相続することになると書きました。
では、協議出来ない事情がある場合はどうなるでしょうか?遺言があるかないかで相続の後の展開が大きく変わってきそうですよね?
世の中には、相続人の1人と疎遠になっている家族もあります。
相続人の1人が認知症を患っていてコミュニケーションが取れない家族もあります。
離婚、再婚という家族関係の変化によって、相続人の範囲が広がっている家族もあります。
それぞれがどう生きるかということの中に、相続は存在しているのです。
自分がどう生きて、財産をどうリレーしていくか。
「揉めないようにしたい 」「 迷惑をかけたくない 」という言葉をよく聞きますが、何もしないでいることが一番迷惑をかける、といっても過言ではありません。
法律を正しく知って、あなたのご家族の「相続の仕組み 」を作りましょう。そうすることで、将来の思わぬトラブルを防止することが出来ます。
そして何より、あなた自身の生き方を示すことが出来るようになります。
お金や財産をマネジメントしながら、ライフステージにふさわしいライフデザインを行っていきましょう。

【福村雄一 プロフィール】

福村雄一 プロフィール

司法書士。1982年生まれ。神戸大学法学部卒。遺言、遺贈寄付、後見、民事信託、身元保証、死後事務委任、相続といった財産の管理、承継に関する業務を専門とする。「出会うことで人が動き出し、共に未来を変える」というクレドを掲げる東大阪プロジェクトの代表を務める。医療職・介護職との協働ネットワークを通じて、ビジネスによる地域課題解決に取り組んでいる。

PAGE TOP