回復していないのに、なぜ退院を迫られるの?

ご質問者様
3ヶ月前に脳梗塞で85歳の父が倒れ、入院しました。幸い命に別状はなかったのですが、身体の右半身に麻痺が残りました。現在、病院側からは来月には退院をして欲しいと迫られています。自宅で療養させようにも、自宅はマンションの3階でエレベーターがありません。入院している病院でリハビリをしているのですが、まだ自力で歩くこともできません。できればこのまま入院を継続したかったのですが、どうして退院させなければならないのでしょうか?

回答

それはとてもお困りですね。お父様に残ってしまった「片麻痺」は日常生活を送っていく上で、何らかの介助が必要な状況となります。お父様のような脳梗塞後遺症の病状で自宅療養されている方はたくさんおられますが、ご家族を含め、社会資源の活用、地域の協力など様々な条件を満たしてこそ快適な生活が送れるといえます。特にご質問者様の心配されているような、日常介護については長期的に考えていかなくてはならない問題となり、現在の御病状を考えると、「生活に支障がなくなるまで入院を継続したい」というお気持ちがあって当然のことだと思います。
では、そんな状況なのに病院は何故退院を迫るのか?
簡単にお話させてください。

1つは『医療技術の発達』によるものです。
入院が短期化した背景には、医療技術が格段に進歩したことにより、検査や手術など短期間で行え身体へのダメージが最小限に抑えられるようになったことがあげられます。そのことによって長期にわたっての急性期医療が必要ではなくなったのです。そのため病院が効率よく運営することによってより多くの患者さんが高度な医療を受けられるような体制がとられるようになったのです。

もう一つは『診療報酬の仕組み』です。
今、お父様が入院されている急性期病院はある一定の期間が過ぎれば診療報酬が下がってしまう仕組みになっています。そのため、一定期間を過ぎた患者さまには退院をしてもらい、新たな患者さまを受け入れるということになるのです。これだけを聞くと「診療報酬の低い患者よりも高い患者を選ぶ=病院の利益」と考えてしまうかもしれませんが決してそれだけではありません。
病院は高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つに機能分化されています。それぞれの病院がその機能に合った役割を果たすことにより、患者さまの病状にあった適切な医療が提供でるのです。前述の『医療技術の発達』も含め『診療報酬の仕組み』についても病院の利益という解釈だけではなく、病状に応じた医療体制が整えられているともいえるのです。
お父様の場合、心配な気持ちのまま在宅復帰を考えるのではなく、病院の機能分化の流れに乗って、お父様に合う病院を探してみてはいかがでしょう。当院のような慢性期機能を有する療養病床も選択肢の一つかもしれません。まずは病院にある医療相談室に相談することをお勧めします。

まとめ

医療技術の発達によって、長期にわたっての急性期医療が必要なくなった。
病院は高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つに機能分化されている。
病院にある医療相談室に相談して、病状に合う病院を探すことをおすすめします。

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