想いが伝えやすく願いが叶いやすい、「託す」という道。

  • vol.6

成年後見制度もあるけれど……。

最近、「認知症、事前に代理人指定 三菱UFJ銀行グループ」といったニュースが配信されました。ご覧になられた方も多いかもしれません。
日本経済新聞の3月8日の記事には、「金融機関ではこれまで認知症の疑いがある顧客とは一律で取引を見送るケースが多かった。成年後見制度など法的な裏付けがなければ親族であっても代理での取引には応じなかった。」という記載があります。
前回のコラムで触れたように、子どもであっても親子というだけで親の財産を管理できるようになるわけではありません。
つまり、親が認知症等の影響で判断能力がなくなってしまうと、たとえば不動産や預貯金といった財産を親が単独で管理処分することができなくなってしまうということです。
判断能力が低下した後の親を守る仕組みの中には、このコラムで過去に取り上げた成年後見制度という仕組みがありますが、実際には年間申立数の7割以上で司法書士等の専門職が後見人等に選任されているので、家族で管理して親をサポートしたいとの希望が叶うとは言えないのが現状です。
そこで、今回のコラムでは、家族みんなの手で願いを形にする「家族信託・民事信託」という仕組みをご紹介します。

名義は変わるが、実質的には所有したまま。

家族信託・民事信託とは、不動産や預貯金等の財産の名義を子どもや信頼できる人に変更し、その人に財産の管理・処分や承継を託する仕組みのことです。
この仕組みを使うと、財産の名義が子どもや信頼できる親族に変わるというところがポイントです。
これまでのコラムで触れてきましたが、不動産や預貯金といった財産は名義人のものであって、名義人以外は家族であったとしても自由に管理処分できません。ここが難点でした。
その点、家族信託・民事信託では、子ども等の信頼できる人が財産の名義人になるので、本人確認や意思確認は名義人である子ども等に対してなされることになります。財産の名義人が子ども等になっているので、本人確認や意思確認もスムーズに進むイメージが持てますよね。
もっとも、親は、財産を贈与したわけではありません。あくまでも子ども等に財産を託したのであって、子ども等は信託契約という契約で定めた内容に従って自分名義の財産を管理処分していくことになります。つまり、実質的な所有者を親のままにしたまま、子ども等に名義を変更できるということです。
この仕組みを作ることができれば、親が認知症等の影響によって判断能力がなくなってしまった場合でも、子ども等の判断によって財産を管理・処分することができます。なぜなら、子ども等が財産の名義人だからです。
親の立場で考えると、家族信託・民事信託は、自分の想いを叶える仕組みだと言えます。
実質的な所有者は自分にしたまま、信頼できる人に自分の想いカタチにすることを託することができるからです。

財産を管理するだけでなく、運用することも。

家族信託・民事信託の場合、5W1Hのように「なぜ託するか」「誰に託するか」「何を託するか」「どこまで託するか」「どのように託するか」ということを家族内で決めることができます。
成年後見制度は財産を守ることに力点が置かれているため、柔軟な財産管理や財産を増やすような運用はしづらい仕組みと言えます。
一方、家族信託・民事信託は、成年後見制度と比べると柔軟性が高い仕組みなので、親の想いをより実現しやすい制度と言えます。また、遺言と同様の効果もあり、信託契約の中で、家族信託・民事信託の仕組みの利用を終わる際に残った財産を相続人である子等に具体的にこのように引き継がせるといった内容を定めることができます。(遺言代用機能)
元気であるうちに、将来のことを考えながら仕組み作りをするというイメージを持っていただけたでしょうか?

「見える化」して親子で共有を。

実務の現場では、親の気持ちと子の気持ちを「見える化」するやり取りを重ねます。
「子どもたちには迷惑をかけたくない」
「親の希望は出来るだけ叶えたい」
お互い同じような想いは持っていますが、親は子どもに財産状況を伝えていないことが多く、子どもは親の財産状況を知らないことが多い、というのが一般的です。
どういう願いを持っているかを親子で共有し、財産状況も親子で共有することが大切です。
そうすることで仕組み作りを一歩も二歩も進めることができるようになります。
まずはその最初の半歩をご一緒しませんか?
仕組み作りをご一緒に進められるのが我々司法書士の存在です。
我々が入らせていただくことで、親子の間をつなぐことができるようになります。
お互いの想いが「見える化」できるようになります。
つなぎ役がいることでより一層未来を想像し、未来を創造しやすくなります。
あなたが主役のライフデザインをあなた自身で実行していくお供に我々司法書士を加えてみてはいかがでしょうか。

【福村雄一 プロフィール】

福村雄一 プロフィール

司法書士。1982年生まれ。神戸大学法学部卒。遺言、遺贈寄付、後見、民事信託、身元保証、死後事務委任、相続といった財産の管理、承継に関する業務を専門とする。「出会うことで人が動き出し、共に未来を変える」というクレドを掲げる東大阪プロジェクトの代表を務める。医療職・介護職との協働ネットワークを通じて、ビジネスによる地域課題解決に取り組んでいる。

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