委ねる人を任意で選べる、そんな仕組みがあります。

  • vol.5

2025年に700万人。

前回のコラムでこの数字を取り上げましたが、覚えていらっしゃいますか?
認知症を患う高齢者が65歳以上の方の5人に1人にのぼるというお話でしたね。認知症は今や誰もが関わる可能性のある身近な病気です。判断能力がなくなってしまうと、自分の財産の管理ができず、自分でお金を使うことができなくなってしまいます。病院等で治療を受けることが必要になっても、医療に関する契約を医師や病院と行えず、治療を受けられなくなるおそれがあります。
本人の判断能力がなくなった「後」の本人を守る仕組みはどんな制度だったでしょうか?
そうです、後見制度でしたね。後見制度には大きく分けて法定後見制度と任意後見制度の2つがありました。前回のコラムでは法定後見制度を取り上げ、その制度の現状がみなさんの認識と大きなズレがあること、それは多くの人にとって想定「外」のことだからではないか、というお話もしましたね。
「家族が後見人になれない可能性が高くなっていること」
「一度始めたらやめられないこと」
「想定していなかった費用がかかること」
こういったズレが生じないように前もって準備することが大切です。
ここであらためてみなさんにお尋ねします。
もし、あなたが将来誰かの助けを必要とする状況になったら
『あなたは誰を頼りたいですか?』
『誰かに頼るなら、頼る相手は自分で決めたいと思いませんか?』
この問いに対する回答の1つが今回取り上げる任意後見制度です。

判断能力が低下したときのために。

任意後見契約とは、委任契約の一種です。本人が、受任者に対し、将来認知症などで自分の判断能力が低下した場合に、自分の後見人になってもらうことを委任する契約です。
ポイントは、判断能力がある間、つまり判断能力がなくなる前に契約する仕組みだということです。自分の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ元気なうちに自分が信頼できる人(委ねる人)を見つけて、その人との間で、将来判断能力が衰えてきた場合に自分に代わって、財産管理や必要な契約を行ってもらうこと(委ねる事)を依頼し引き受けてもらう、という仕組みです。
この仕組みを作ることで、安心して生活していくことができます。そういう意味合いでいうと、任意後見契約は「エイジングプランニング」と呼べる仕組みかもしれませんね。将来のことを想像し、①誰に委ねるか、②何を委ねるか、③どこまで委ねるか、これらのことを自分の想いに合わせて設計しておくわけですから。
後見人には家族や友人になってもらうことが可能です。契約内容も基本的に自由に決めることができますが、中心は財産の管理と、介護や生活面の手配となります。オーダーメイドの仕組み作りといったイメージですね。

仕組みを知って将来を描く。

ただ、全く家庭裁判所つまり国の関与がないわけではありません。任意後見制度を利用する際には必ず任意後見監督人が選ばれます。任意後見人は、あなたが選んだ任意後見人が適正に仕事をしているかをチェックする役割を持っています。我々司法書士のような専門職が選ばれることが多く、報酬(1~2万円が多い)も発生します。
「え、なんだ、結局財産が減るんだ・・」と思われる方もいらっしゃると思います。ですが、この負担感は解消することができます。なぜなら、前もってわかっている費用だからです。
想定「内」ですよね。
法律の仕組みを正しく知れば将来のことを描くことができます。仕組みについて話し合う機会を持ち、備えることができます。自分が望む形やそれに近い形でライフプランをデザインすることが可能です。その仕組み作りをお手伝いできる職業の1つが我々司法書士です。
未来を想像し、未来を創造する。あなたは、あなたの人生のデザイナーです。
あなたが主役のライフデザインをあなた自身で実行していきましょう。

【福村雄一 プロフィール】

福村雄一 プロフィール

司法書士。1982年生まれ。神戸大学法学部卒。遺言、遺贈寄付、後見、民事信託、身元保証、死後事務委任、相続といった財産の管理、承継に関する業務を専門とする。「出会うことで人が動き出し、共に未来を変える」というクレドを掲げる東大阪プロジェクトの代表を務める。医療職・介護職との協働ネットワークを通じて、ビジネスによる地域課題解決に取り組んでいる。

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