『胃ろう』でも、食べる喜びを

「胃ろう」というのを聞いたことがあるでしょうか?
病院に入院される患者さんの中には、脳疾患などの病気の理由で飲み込む力が弱くなってしまい、上手に飲み込むことができない方が少なくありません。そしてこのような方は誤嚥による肺炎を起こしてしまうこともあります。こうしたリスクを回避するために、食事以外の方法で栄養補給をする必要がでてきます。その方法の一つが「胃ろう」なのです。
では、胃ろうを付けたことにより、人は口から二度と食べることができなくなるのでしょうか。いいえ、そうではありません。胃ろうを付けていても、口から食事を取れる方もおられます。最後まで自分の口で味わうということに希望をもつために、「胃ろう」についてお話します。

「胃ろう」は何のために使うの?

胃ろうは、胃に直接栄養を入れる方法のひとつです。内視鏡を使い胃に穴をあけて、栄養を送り込むためのカテーテルを挿入します。鼻から管を通して栄養を送り込む方法に比べ、鼻や喉に違和感がないため、苦痛がないのが特徴です。脳疾患の病気などのの後遺症によって「ゴックン」と飲み込む能力がなくなったり衰えてしまったときに栄養補給をするためにつけるものです。

介護するには、他の方法のほうが楽なのでは?

栄養補給の方法で、皆さんがよくご存じなのは点滴でしょう。長期的に利用も可能ですが、管理が煩雑なため、介護施設や在宅での継続が難しいのです。胃ろうと同様によく利用される「経鼻経管栄養」といった鼻から通された細いチューブで胃に直接栄養を届ける方法もあるのですが、不快や苦痛を感じやすく、清潔を保つために頻繁に入れ替えを行わなければならないなど、手間がかかってしまうのです。そのため、両者に負担がすくないのが「胃ろう」なのです。

「胃ろう」でもたべられるんです

胃ろうを付けることにより、食べれないと決めつけてしまうケースがあります。
急性期の状況を乗り越え嚥下能力がある程度回復しているまたは誤嚥による嚥下性肺炎予防のために漫然と胃ろうを使用しているようなケースです。
もちろん、誤嚥を防ぐためには食事の形状や介助において、周囲が気を使わなければなりませんし、口腔周りの筋肉トレーニングや飲み込む練習も必要です。
生きていくだけの栄養をお口から全てとれるようになるのはほんの一握りの方だけかもしれません、しかし少しでも自分の口から物を食べるまたは飲み込めない場合でも味わうことはできるかもしれません(コーヒーが好きな方はコーヒーを凍らせて舌の上にのせてあげます、するとコーヒーの味を楽しめます)。
美味しいものを食べる、味わう楽しみは人間の生きたいと思う気持ちを引き出すことができるのです。

食べられる人に、食べる喜びを

胃ろうだからもう食べられないと諦めるのではなく、患者様の病態やトレーニングの状況次第で、再び口から食べ物を飲み込むまたは味わうことができるかもしれません。
食は人生の楽しみの一つです。そのことを最後まで諦めずに頑張ってみることが医療の現場において大切なことかもしれません。そして、喜びの表情を見ることができれば、皆さんきっと嬉しいですよね。

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